今まで主役となる事がなかった王賁
キングダムは歴史を元にして想像力を膨らませている物語で、基本的には嬴政(えいせい)が秦の始皇帝と呼ばれるようになるまでの話なので、登場人物も史実に名前が記されているキャラクターが多いです。楚(そ)の媧燐(かりん)なんかは完全なオリジナルキャラクターですけど。
そういう事情で、戦なんかも実際に起こった戦いが元になっています。前回のアニメで起こった合従軍戦や、南道から龐煖(ほうけん)が攻めてくる辺りも、内容はアレンジしていても歴史に基づく展開です。
そんな中にあって今回の著雍(ちょよう)のお話は、完全なオリジナルのストーリーと言われています。何故、そんな話を盛り込んだのかと言えば、実は嬴政と呂不韋(りょふい)の最終決戦を控えたこの時期、大きな戦いがないからであり、同時に表向きは王弟・成蟜(せいきょう)の反乱という形で決着がついた前回の政争からそのまま最終決戦に突入してしまうと、権力争いの駆け引きが長過ぎて視聴者を飽きさせてしまうと考えたのでしょう。
歴史上はなかった合戦をここに差し込んできました。それが著雍の戦いなのですが、今回の主役は、完全に王賁(おうほん)です。勿論、信や飛信隊、今回初登場した魏火龍(ぎかりゅう)七師(しちし)も活躍しますが、やっぱり注目は王賁!今まで憎まれ役や二番手、三番手の扱いを受けてきた信のライバルに、初めてスポットが当たります。
王賁と成嬌。意外と似てる二人
今まで考えた事もなかったのですが、前回までのお話で中心となった王弟・成蟜と今回から登場する信のライバル王賁は結構似てるという事です。信ですら成蟜と会うのは二度目だったのですから、この二人には勿論、面識はありません。
ひょっとすると秦国随一の名門士族の跡取りと王族なのですから面識はあるかもしれませんが、王賁の方は現場で手柄を挙げて誰よりも早い立身出世を望んでいて、偉くならないとやりたい改革もできないと胸に誓っています。これには生来の負けず嫌いが影響し、同じ独立遊軍で立場も年齢も近い信と蒙恬(もうてん)を強く意識しているからでもありますが、とにかく、出世を望みながらも煩わしい中央の勢力争いとは距離を取っている感じが見受けられます。
また一方の成蟜にはいざという時に武の力を発揮できる良い武将が周りにいません。クールなように見えて理想主義者で、同時に足元を見つめる現実主義者であるところや、血筋に対する誇りが性格的にも大きな影響を与えた部分など、考えれば考える程、二人は似ています。ちょっと不器用な部分なんかは、特にそうですね。
物語的には成蟜から王賁にバトンが渡された形ですけど、私には遂に肩を並べる事の出来なかった贏政と成蟜の兄弟の代わりに、信と王賁が並び立つ姿が用意されたような気がして、ちょっと胸が熱くなってしまいました。
王賁と王翦。最も冷め切った父子関係
今回、王賁の言動は非常に目立っていたのですが、印象に残ったのは珍しく王賁が自分の言葉を訂正したシーン。父・王翦(おうせん)の元に援軍を要請するのを止めろと言った事に対し、私情がないと言えば嘘になると認めたところでした。
プライドが高くて絶対に自分の非を認めないような王賁がみんなの前で素直に話すところが、とても彼の成長を感じさせる場面でした。まあ、言い方は偉そうではあったのですが。
秦国の現状を踏まえて冷静に戦況と現実を語る中にその私情も隠されていたのですが、考えてみると、一番会話のない親子なのかもしれません。同じような微妙な父子関係といえば蒙恬と蒙武(もうぶ)の親子もあげられるのですが、この二人はあくまで不器用なだけで、互いの事を大切に思っているのがよく伝わってきます。一方の王翦と王賁の父子は、父親の方が何を考えているのか分からない部分があり、息子である王賁の反発も目に付き、とても良好な関係とは言えません。唯一、王翦の部下が非常に王賁と彼が率いる玉鳳隊(ぎょくほうたい)の動向に騒いでいる場面が目立つくらいです。
この父子関係はこれから物語に大きな影響を与えるのですが、それは今後の物語によって少しずつ明らかにされていくでしょう。ただ、キーワードは秦国随一の名門武家、王氏の宗家だという事です。
伝説の秦の六将のうち、二人は王氏から出ています。それに王騎将軍の家で下働きをしていた出身という事になっている摎(きょう)を加えれば、実に六将の半分を輩出している王氏はまさに超名門。そこの宗家である事は父にも子にも当然、大きな影響を与えています。いつか、彼らの口から王騎将軍の事を話す場面など、ぜひ、見てみたいところですね。
王賁と信。ライバルだからこその奇妙な友情
そしてこれからのお話に最も重要な関係性が信と王賁のライバル関係です。今回二年以上の空白を経て久し振りに再会する訳ですが、いきなり二人は喧嘩を始めてしまいます。それも互いに刃で互いを斬り刻み、ほんのかすり傷とはいえ出血する場面も見られます。
周囲はハラハラするのですが、印象的なのは実力からいって唯一この二人を止められる羌傀(きょうかい)があくびをしている事です。考えてみれば信と羌傀が稽古しているシーンでも、大体こんな感じです。それはその後にこの喧嘩を止める謄(とう)将軍が
「乳繰り合うのは本番が終わってからだ」と言っている場面からも。はた目には喧嘩に見えるこの場面、強者から見たら二人がじゃれ合っているだけだと映る事の証明です。
信と王賁は仲が悪く、また隊長同士の事がなくても飛信隊と玉鳳隊は仲が悪い。これはそれぞれの出自によるところが大きいですが、実際にライバル同士でもあります。
ただ、仲が悪いのとお互いを認めていないというのは、また別の話になります。この、意地を張り合うけど心の底では認めているという部分が、凄く男の子っぽくて、男臭い物語である「キングダム」っぽくもあります。
今回のエピソードは冒頭でも述べた通り、初めてと言ってもいい王賁を中心にしたお話。ライバルの信や飛信隊の事をどう意識しているのか、その関係性がとても注目されます。
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いかがでしたか?
お届けしたのは、天衣無縫の調のさくらでした。
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