2022年春アニメキングダム

「KINGDOM~キングダム~」考察。 王騎の矛はなぜ信に託されたのか?

2022年春アニメ

 

謄や録央未、蒙武が欲した王騎の矛

信が王騎の矛を受け取れたのは、主人公だから!?
どうして王騎将軍は自身のともいうべき愛刀を
(この場合は「剣」ではなく「矛」なんですけど)
童(わらべ)と呼んでいる信に託したのでしょうか?

それを譲り受けたいと思う者は多いでしょう。
王騎軍の副官であり、王騎亡き後はその軍を託される事になる
事実上の後継者・謄(とう)は当然譲り受けたいだろうし、
その資格も十分にあるだけの人物に映ります。
実際、自分に劣るところのない器と王騎将軍も認めています。

謄は剣士だから渡されなかったという考え方もできるのですが、
実はこの時点では信も剣士で矛を使っている訳ではありません。

蒙武(もうぶ)も後に一度だけ信に対し
「使わぬのなら俺が貰ってやってもいいぞ」と
その矛を所有したい意志を示していますし、
王騎将軍もまだまだ実戦不足と言いながら武将としての蒙武を認めています。

更に王騎軍の兵士にとってみれば、それを譲り受ける事ほどの名誉はなかったでしょう。
第1軍長の録嗚未(ろくおみ)などは、王騎の死を知って、
後を追い自分も死のうとするほどの無茶な戦闘をしたほどですから、
もちろん託されたかったはずです。

こういう、実績十分な武将ではなく、
どうして信が選ばれたのか
もう少し深く考察していきたいと思います。

矛のたどり着く先は未来

もしも信に託さなければ、あのはどうなっていたでしょう?
生命の炎が消える間際、王騎将軍を敵に渡さないために
蒙武(もうぶ)を筆頭に王騎の部下や信は懸命の反攻をして脱出するのですが、
敵の指揮官が李牧(りぼく)でなければ、
相手の追撃はもっとしつこいものになっていたはずです。

この人!という人が居なかった場合、王騎の性格からしたら
自身を仕留めた相手である李牧に敬意を表して
矛を届けるように遺言として残す可能性もありました。
また、それも戦国と笑ってそういう行動を取りそうな人物にも見えます。

ただ、王騎将軍の性格や言動からして、
愛刀の矛を使ってくれる事を望んだでしょう。
戦場で振るわれる事なく大事に飾られる事を本望だとは、とても思えません。

大事に使ってくれる相手
あの重い矛を使いこなせる武将。
場合によっては昔からの知り合いである麃公(ひょうこう)将軍。
敵ではありますが同時にライバルでもあった趙(ちょう)の
初代・三大天・廉頗(れんぱ)という武将ならば思う存分、
王騎の矛を使いこなせたでしょう。

ただ、あれだけの戦術眼と先見の明を持つ王騎が、
そういう先の事を考えない訳はないはずです。
その上で信に託した。その理由は明確。
自身の想いを背負える未来こそ、矛の行き着く先だったのでしょう。

信と王騎を繋ぐ「天下の大将軍」という言葉

「将軍」というのは、言ってしまえばただの役職です。
5人一組のチームの長が「伍長」。
百人の隊を率いる長ならば「百人将」という階級。
その上位に属し万の兵を率いる事を認められた立場の事です。

しかし信は明らかにそれ以上のものを「将軍」という存在に抱いていました。
恐らくは唯一の身内だった漂(ひょう)と二人で夢見た立身出世の到達点
最高に格好良い武将であり、信や漂にとっての夢の存在
それが「天下の大将軍」という立場であった筈です。

王騎はそれを現実にしたような存在であり、信がその後も手本とした将軍です。
そして王騎自身も、将軍という存在にそんな夢を見た武将でした。

戦の勝敗だけでなく、国の行く末、兵たちの生命、
無事を祈る家族の願い、部下たちの信頼、敵の畏怖。
あらゆる想いが戦場には渦巻き、数多の人の想いが将たる武将に降り注ぎ、
その全てに応える時、苛烈で非情な戦場は
とても煌びやかな晴れ舞台へと変わるのです。

敵、味方どちらにも悪意はなく、言ってみれば正しさの押し付け合い。
そんな戦国の荒野に咲く理不尽で傲慢で、
けれども儚く熱い大輪の花

生命を奪い合うからこそ、そうであるべきだと考え、
そして、そうであろうとした偉大な将軍が王騎であり、
だからこそ自身の事を「天下の大将軍」だと語るのだと思います。

信と嬴政(えいせい)にある特別なもの

戦場という過酷な現場を預かる長が将軍だとしたら、
その将軍を任命する人物こそが国を治める国王です。
この両者に固い信頼関係がなければ、
両者は安心して互いの背を預け、敵と戦う事は出来ません。

今の国王である嬴政(えいせい)と信の間には、
奇妙な縁で知り合い、共に背を預けて窮地を乗り越えたという、
特別な信頼関係があります。
国王と本音で、それも対等に話せる人間など、他のどこを探しても見当たりません。

 

だからこそ信は自身の事を「あいつの金剛の剣だ」と、
のちに語る事になるのです。

かつて王騎の背には「戦神(いくさがみ)」と呼ばれ、
自身がその剣となる事を望んだ昭王という偉大な王が居ました。

けれども、昭王が亡くなられた後、
決して次の国王に仕えようとはしませんでした。
私利私欲や出世のために将軍という剣を使うのではなく、
国のため、民のため、背負うもののために戦いを決断するような
王でなければ自身の生命も、背負ってきた想いも、部下の人生も
ただ使い捨てられるだけのものになってしまうのが分かっていたからでしょう。

そんな王騎が新たに認めた国王である嬴政(えいせい)のために
戦場へ戻る事を誓い、その国王と特別な絆で結ばれた信こそが
王の剣である将軍に成るに相応しい人材だと密かに確信し、
育てようとしたのだと思います。

結果として道半ばで王騎は生命を落としますが、
だからこそ最期の時、他の誰でもなく信に想いを託したのでしょう。
他ならぬ信だけが、想いのたけが詰まった矛を思う存分使ってくれる。
王騎にはそんな未来が見えていた。
私は、そんな風に思ってしまうのです。

王騎将軍の信への親心

その場に居たタイミング
国王との特別な信頼関係
そして天下の大将軍への真っ直ぐな憧れ
これらが王騎自ら信に矛を託した理由だと思われますが、
付け加えて、信の育った環境もあると思います。

戦災で親を失い、身寄りのない子供だった信は、
奴隷同然の下僕として生きてきました。
そしてその身分の低さは、信の成長と出世に
大きな壁となる事は王騎でなくとも簡単に想像できます。

この当時の出世には身分が必要とされます。
そして、身分の高い者ほど、背景にあるコネや人脈が影響力を行使します。

幾ら評価をする人物がその働きや能力だけで純粋に推し量ろうとも、
時にその影響力は無視が出来ない場合もあります。
そうした時、弾かれるのは身分が低く強い背景を持たない信のような人物です。

王騎ほどの将軍がその愛刀である矛を最期に託した若武者。
たったそれだけの事実が、その後の信にとてつもない
通行手形となって道を切り拓いてくれます。
身分の低さによって不当に扱われる才能を、
その手形でどれだけ助けられるか。

先を見通す王騎将軍には、その効果が分かっていた。
だからこそ信を助けるために最後の最期、矛を託した。
何故だか、そんな親心を感じずにはいられない。
あの重い矛には、そんな想いが込められているような気がしてならないのです。

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いかがでしたか?
お届けしたのは、天衣無縫の調のさくらでした。

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