麃公兵だった我呂が発言力と存在感を増す背景
今回の話では飛信隊の娘軍師こと河了貂(かりょうてん)に焦点が当てられるのですけど、緊急の話し合いが行われた飛信隊の方で発言力と存在感を示したのは、かつて麃公(ひょうこう)兵だった我呂(がろ)です。
合従軍との戦いの後に飛信隊に加わった500人の元麃公兵は二年の月日を経て乱戦特化部隊の飛麃(ひひょう)隊として飛信隊の中で存在感を放っていたのですが、恐らくリーダー格だった岳雷(がくらい)が無口な存在の為、我呂の発言力が自然と増したのでしょう。
物怖じせず、ズカズカと言いたい事を言い、聞きたい事を聞く彼の振る舞いはどこか麃公将軍を思い起こさせます。
そして、我呂が隊長である信に聞いた「貂はお前の女なのか?」という言葉こそ、今回の核心のような気がします。
飛信隊は結成時からのメンバーが主力を務める隊だからこそ家族のような雰囲気があり、だからこそ遠慮して聞けないような事を聞く存在が入る事で、新たな関係性が生まれます。そういう意味で、この戦いをきっかけにして、我呂はこれから更に発言力と存在感を増して飛信隊に新たな関係性を生むのでしょう。
何も望まぬ少女だった河了貂が「強欲」だと言われるまでになる成長
敵にさらわれ心配された河了貂だったのですけど、敵の大将である凱孟(がいもう)が相対する飛信隊の隊長である信に興味を持った為、凱孟との面会の場に呼ばれます。それまでのほんの少しの間ですけど、戦争によって家族の命を奪われた恨みが河了貂に向けられて、その憎しみの強さと深さに河了貂が飲み込まれそうになる雰囲気に、思わず寒気がしました。戦争の残酷さを現わすシーンだったと思います。
その一方で、短い言葉のやり取りの中で凱孟をよく表現する「欲望」というワードが貂に突きつけられました。
最後には凱孟から「お前は強欲だ」と言われてしまうのですが、そこに貂の成長がよく表現されていたと思います。
なぜなら、信が初陣に出掛ける前、貂は質素な信との生活に満足していました。信が重い物を運ぶ日雇い仕事でお金を稼ぎ、貂が木の実などを拾って家事をする。ずっとこのままでも良いと。
そんな何も望まなかった少女が、強欲と言われるまでに大きな望みを抱いている。そしてそれこそが、ただの少女が戦場に立つ理由になっている。その源は家族同然の存在である信を思う気持ちなのですが、それがはっきりしただけでなぜだか飛信隊はいろんな事がはっきりとしてくるのです。こう考えると、気持ちの確認って、大事ですよね。
信をめぐる羗傀と河了貂
気持ちがはっきりしてくると、気になるのは信との関係性になります。信は河了貂を新たな家族、妹のような存在だと言いました。その一方で、河了貂は信と夫婦になるような家族の姿もどこかで抱いているような気がします。
そして信はまるで恋愛感情に疎い戦バカのように描かれていますけど、そんな信が異性を意識するシーンが時折見られます。そして、その時の相手がいつも羗傀(きょうかい)なのです。彼女がこの物語で一番人気のヒロインだと言われる理由ですよね。
では、この羗傀と河了貂はお互いの事をどう思っているのでしょう?実は二人は飛信隊の結成前から出会っています。河了貂が軍師になる道すじを付けたのは、実は羗傀の推薦状です。一方、羗傀にとっての河了貂は、最初から信の家族のような存在でした。
ある意味で最初から姉と妹のような部分があったとも言えます。河了貂にとっては自分の悩みを打ち明けられる唯一と言ってよい同じ女性の存在が羗傀でした。
そして恐らく、千年続く伝説の暗殺者一族の出身である羗傀はどこか感情が欠落している部分があり、心に引っ掛かる部分はともかくとして、それ以外の部分は凄く合理的に考える傾向にあります。そして、その思考にとって飛信隊の軍師としての河了貂は凄く良い存在だったと思います。
恐らく、羗傀は今まで信と河了貂の関係性を考えないようにしてきた。或いは、敢えて考えないようにしてきた感じがします。それが今回、そういうわけにはいかなくなり、きっと羗傀にも変化が起こります。それが今後にどう影響するのか、次回が楽しみですね。
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